日本政府の「AIと著作権」に対する見解
文化庁ならびに内閣府は、2023年5月30日に「AIと著作権の関係等について」という文書を公開しました。
基本的な考え方はAI以外のコンテンツと同様
今回の政府の発表は、簡単にいうと、AIで生成したコンテンツについても、既存コンテンツと同様の考え方で、「私的利用をのぞいて、既存のコンテンツと類似性が認められれば著作権侵害になる」ということになります。
つまり、「どんな作り方をしたか、何で作ったか(AIで作ったか)」は問題ではなく、あくまで公表されたコンテンツ自体で判断をするということになります。
ただし、従来のコンテンツと違い、AIで生成したコンテンツの「類似性」をどうやって検証するかは課題があるところでしょう。
モデル構築時のコンテンツ利用に許諾は不要
従来は、「発表する成果物」に対してのみ著作権が適用されていましたが、AIという文脈で考える際には、モデルを構築(学習)する際に利用するコンテンツについても著作権があるという考えがあります。
アメリカでは、AIサービスが他者のコンテンツを使ってモデルの構築をする場合、AIサービス側は元となったコンテンツホルダーに対して相当の対価を支払うべきだという意見が出てきています。
今回の日本政府、文化庁の見解によると、「AI開発のような情報解析等において、著作物に表現された 思想又は感情の享受を目的としない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく利用することが可能」としているため、現状ではモデルの構築おけるデータの利用に著作権は発生しないとしています。
生成AIを利用する上で著作権について注意すべきポイント
知らない間に著作権侵害をしてしまうケースも
これまでは、コンテンツの作成時に著作権侵害となるケースは、コンテンツをコピー(類似させる)という「明らかに著作権侵害する行為」があったため、作成者にも「身に覚え」があることがほとんどでした。
一方で、AIで生成するコンテンツは、文章であれ画像であれ、「何を元(データ)に学習をしているのかわからない」という点で、利用者側が認識していない間に著作権侵害をしてしまう可能性を秘めています。
そういった背景があるため、Amazonのコーディング支援AI・AWS Codewhispererでは「公開コードに一致するコードの提案をブロックする」機能を搭載していますが、テキストや画像に関するAIサービスについては、現状では生成物の著作権に関する機能を搭載しているケースはほぼありません。
AIで生成した似たコンテンツの著作権はどうなるのか?
また、仮に同じAIから「似たようなコンテンツ」が生成された場合、どこに著作権を帰属させるのかという問題もあります。
例えば、AIに小説を書かせて作品として発表したところ、同じような条件でAIに指示をして作成された作品が既に公開されていて、著作権を主張されるというケースも想定されます。
そうしたケースや、生成物の著作権に関する不透明さがある点を理解した上で、生成AIを使うようにするのが重要となるでしょう。
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